にったろぐ

漫画読んだり、靴の話だったり、ものづくりとか、たまには仕事とか、好きなことを好きなときに。

夏の日の1993 あの日病院で見たおじいちゃん

あの日僕は病院にいた

summer sun shining through . . .
1993年夏の日、僕は病院にいた。高校3年生、暑い夏の日の朝、病院の待合室で僕はそのおじいちゃんに会ったんだ。

この日の前日、僕は原因不明の血尿が出て、大きな病院に検査に来ていた。怖い、何が原因なんだろう、どんな検査をされるんだろう。不安に押しつぶされそうだった。

おじいちゃんも不安そうな顔をしていた。横には娘さんだろうか、50代くらいの婦人が付き添っていた。

ここは泌尿器科。何をするにもまずは検尿だ。高校生の僕でも、高齢のおじいちゃんでも例外ではない。

突如待合室に響き渡る娘さんの金切り声。

「おじいちゃん、なんでオシッコ出ないのよ!」

耳を疑った。

「そんなこと言ったって出ないんだよ...」

おじいちゃんの悲しそうな声が聞こえる。そこから何度も娘さんはおじいちゃんを責め立てる。検査どうするの、ここまで来たのに、なんで家でトイレ行っちゃったのよ、と。

僕は耳を塞いだ。戦争をくぐり抜け、高度経済成長を支えてきたであろうおじいちゃんが、オシッコが出ないと娘に叱られている。こんな悲しい話は聞きたくない。僕だってどんな検査をされるか不安でしょうがないんだ。


耳を塞ぐ僕に看護婦さんが笑顔で呼びかける、診察室に来てください、と。僕は悲しそうな顔をしたおじいちゃんを横目に診察室に入った。田舎の病院の診察室。外ではアブラゼミがうるさく鳴いていた。


なんでこんなことを急に思い出したんだろう?僕は今健康診断に向かっている。簡易的な人間ドックのコースで胃カメラを飲むんだ。人生で二度目の胃カメラ。すでに健康診断が終わった同僚たちは胃カメラの辛さを僕に伝えてくる。

憂鬱な気持ちで僕は今病院に向かっている。昨晩から絶食で、今朝は水も飲んでない。

昨夜ベッドで眠りにつく前、「明日、朝トイレに入ったら検尿できないかもな。起きたらトイレに行かずに、そのまま家を出よう」そう思っていた。

果たしてそうはならなかった。寝起きにトイレに行ってしまったら後の祭り。ああ、もう僕の体の中にオシッコは戻って来ない。覆水盆に返らずだ。

僕は不安で胸がつぶされそうだ。あの日の待合室で会ったおじいちゃん、僕もオシッコが出ないかも知れないです。あなたは一人じゃない、そう今なら伝えてあげたい。

頭の中に流れるのはclassの「夏の日の1993」サビしかわからないこの曲が延々と流れてる。

あの日も外ではアブラゼミがうるさかった。

夏の日の1993(Class) - YouTube