車田正美の最高傑作「風魔の小次郎」を20数年ぶりに読んだ
小中学生のあこがれ「木刀」熱を最高に高めた漫画
風魔の小次郎とは?
ここ1年、僕は「風魔の小次郎」が読みたくて仕方が無かった。なぜだかはわからないけど、僕の中の懐古厨衝動と、厨二衝動がうまく重なり、ひいてはそれらの初期衝動の塊のような風魔の小次郎が出てくるのは必然だったのかもしれない。
んで、ひたすらに漫画喫茶をはしごしたんだけど全く出会えない。ついでに六三四の剣も探したんだけど、それも無い。僕の木刀熱がどんどん高まり、とうとう買うことを決意した。そもそも風魔の小次郎が電子化されてるのかも怪しいが、kindle本を探してみたら、あるね。すげーな、集英社。
全10巻をポチった。さて、昭和生まれの40歳前後のおっさんが少年だったあの時代、その頃を知らなかったら誰も知らない風魔の小次郎とはどんな漫画だったのか?
現代に生きる忍者集団風魔一族の戦士である小次郎は、戦士として戦いの日々を送っていた。学園の裏で暗躍する夜叉一族、孤高の戦士飛鳥武蔵、聖剣を独占し大地の支配を目論む華悪崇など、強大な敵たちが次々と小次郎の前に立ちはだかる。
マンガペディアより引用しました。
だいたいこんな感じの漫画ですが、もう少し詳しく魅力を伝えていきたいと思います。
風魔の小次郎10の魅力
まずは風魔の小次郎の魅力を10個に分けてみました。一つずつ追っていきましょう。
- 最強の武器「木刀」
- 制服しか存在しない世界観
- とにかく魅力的なキャラクターネーミング
- 言うだけで炸裂する必殺技
- 真っ黒で登場、真っ黒で終了
- 伝説の十聖剣とそのネーミング
- とにかく驚く飛鳥武蔵
- 素晴らしく効果的な擬音
- 「そんなばかな」「まさか」「あいつほどの」「フッ」
- シンプルで予定調和なざっくりストーリー
書いていてちょっと馬鹿にしてる感じあるけど、違うんですよ。マジで面白いんですよ、この漫画。
最強の武器「木刀」
風魔の小次郎において、登場人物のメインの武器は「木刀」です。シンプルに木刀。考えたら当たり前なんですが、木刀の殺傷能力って本当に高い。フルスイングしたらそりゃ相手の人生は終わりですよね。そういう木刀の能力をいかんなく発揮してます。僕は小学校の当時何とかして木刀を手に入れようって思ってたんですが、親が買ってくれなかったので角材を削って作ったりしてました。
データが探せなかったんだけど、木刀の国内生産高は連載中の1983年~1984年がピークだったんじゃないかな(希望的観測)。
制服しか存在しない世界観
日本各地に散らばる忍び、いきなり現れる敵、4000年以上前からともに戦う仲間、敵、すべてが制服。防御力ゼロの学ラン(中ラン、長ラン、白ラン、短ランが無いのは時代かな)をみんな着てる。なぜか?それはもちろんカッコいいからでしょう。
とにかく魅力的なキャラクターネーミング
厨二魂をくすぐる、というよりはど真ん中を突き刺すキャラクターや、その集団のネーミングセンスは車田正美の真骨頂。マジでこれはやばい。全部書き出したい気持ちを抑えて、いくつか挙げてみます。
- 夜叉八将軍(やしゃはっしょうぐん)
- 琳彪(りんぴょう)
- 華悪崇(かおす)
- 龍王院狂須(りゅうおういんくるす)
- 邪火麗(じゃっかる)
どうですか?ワクワクしかないでしょ?これは本当に一部です。正直、全キャラクターの名前が秀逸です。
言うだけで炸裂する必殺技
これは車田正美の漫画全部に共通するんですが、「叫んで殴る」「叫んで蹴る」「叫ぶ」「言う」これだけで必殺技が炸裂します。それで言いんです。何がいいって、小学生が誰でも真似できます。構えだけわかれば真似できるんです。
主人公の小次郎にも必殺技はあるんだけど、たった一回しか登場しません。聖剣戦争以降、聖剣の力が強すぎて「技名=剣の力」なんですよね。それは残念。
真っ黒で登場、真っ黒で終了
未知の敵を黒塗りにしておくのって、風魔の小次郎が最初なんじゃないかな?この表現ってすごく秀逸だと思います。時には黒いままでやられてしまうキャラもいて、子供心に「あー、顔見たかった!」って思ったものです。
伝説の十聖剣とそのネーミング
これ、これですよ。風魔の小次郎の魅力を語る上で8割くらいの重要度を占める聖剣。その10聖剣の名前を紹介していきます。マジでセンスある。
風林火山(ふうりんかざん)
正統な戦士:風魔の小次郎(ふうまのこじろう)
どんな能力?:剛力。岩とか鉄の鎖とか切れる。ドラクエでいうとバイキルト。
黄金剣(おうごんけん)
正統な戦士:飛鳥武蔵(あすかむさし)
どんな能力?:光る。本人の気力に連動する。ドラクエでいうとニフラム。
紅蓮剣(ぐれんけん)
正統な戦士:伊達総司(だてそうし)
どんな能力?:紅蓮の炎を出せる。ドラクエでいうとメラミ。
白朧剣(びゃくろうけん)
正統な戦士:死牙馬(しぐま)
どんな能力?:白い魂的なものを出す。ドラクエでいうとザラキっぽい感じ。
征嵐剣(せいらんけん)
正統な戦士:風魔の竜魔(ふうまのりょうま)
どんな能力?:大地を斬り裂き、巻き上げる。ドラクエでいうとバギマ。
幻夢氷翔剣(げんむひしょうけん)
正統な戦士:朱羅(しゅら)
どんな能力?:幻覚+冷気。実は一対一ならこれが最強なんじゃないか感ある。ドラクエでいうとモシャス。
紫煌剣(しこうけん)
正統な戦士:邪火麗
どんな能力?:まばゆく輝く。ドラクエでいうとニフラム。ときどきマホカンタ。
十字剣(じゅうじけん)
正統な戦士:雄皇(おず)
どんな能力?:大地を十字に斬り裂ける。アラレちゃんのパンチ的な能力。
雷光剣(らいこうけん)
正統な戦士:涅絽(ねろ)
どんな能力?:電撃。雷神を飛ばせる。FFでいうとラムウ。
鳳凰天舞(ほうおうてんぶ)
正統な戦士:華悪崇皇帝(かおすこうてい)
どんな能力?:もっとも雄々しく、もっとも神の力に等しい。めだかボックスにおける都城王土的な能力。
ああ、マジでたまんない。これらの剣って、全部「刃」が付いて無いんですよ。斬る前提で作られてない。なんか発したり飛ばしたり、叩いたり殴ったり。素敵すぎる。
とにかく驚く飛鳥武蔵
飛鳥武蔵はそのクールなキャラとは裏腹に、ベタに驚いているシーンが多いです。飛鳥が驚くんだから、それは大変なんだろう、っていうのを読者にインプットするので、それはそれは重要なんです。
素晴らしく効果的な擬音
みんなも見たことあるでしょ?「ゴゴゴゴゴ」って表現。これってジョジョが最初説多い気がするんだけど、僕は声を大にして言いたい。風魔の小次郎が最初だ!(メイビー)その他にも相当素敵な擬音たちが登場します。マジで天才なんじゃないかな。
竜魔と夢魔のゴゴゴゴゴ。連載当初この2人が実は兄弟で、とかそんな期待をした覚えがあります
「そんなばかな」「まさか」「あいつほどの」「フッ」
実際の生活において、こんなセリフ絶対に言わないんだよね。それをふんだんに使う世界観は、厨二魂をビンビンに揺さぶります。小学校の頃よく「フッ」って言ってた気がする。霧風の「フッ」が好き。
あと、「あいつほどの」とか「俺より」とかそういうの多いけど、当たり前のようにザコフラグです。これも風魔の小次郎が最初なんじゃないかくらい多用されてます。「まさか」とか伏線っぽく描きますが、全く回収されません。でも、それがいい。
シンプルで予定調和なざっくりストーリー
正直ね、この漫画って超大味なストーリーなんですよ。超適当だし、何にも細部が詰めらてない設定甘いっていうか無い。でもそれがいい。
- 夜叉八将軍と戦う
- 華悪崇と戦い、聖剣戦争勃発
- なんか正体のわからない敵と戦う
これだけ。成長のための修行も無いし、武器を手に入れるための苦労も無いし、目の前の敵をただただ倒していく。初期から出てるキャラだってあっけなく死ぬ。
でも、それがいい。
この漫画の良さは「圧倒的な厨二感とそれをシンプルに表現してること」なんです。理屈なくワクワクするんですよ。20数年ぶりに読んだらいろいろツッコミどころはもちろんあったけど、それらを凌駕する面白さは健在でした。
たった10巻で終わる名作なので、みんな読んでみるといいと思います。懐古厨の現場からは以上です。